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広島市安佐北区で4月、自宅にいた妻(80)を、承諾を得て殺害したとして、夫(72)が先月、承諾殺人罪で起訴された。夫は、体が不自由な妻の介護を続け、周囲には、仲の良い夫婦に映っていた。事件の背景に、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」の問題が浮かぶ中、夫婦の知人らは「何があったのか知りたい」と真相解明を求めている。(豆塚円香、宮山颯太) 【写真特集】女子刑務所の高齢受刑者「塀の中のおばあさん」
起訴状では、夫の無職、村武哲也被告は4月30日午前8時頃、自宅で妻の亥聖(いせ)子(こ)さんの承諾を得て、首をマフラーで絞め、窒息死させたとしている。県警の調べに、「間違いない」と認めているという。
同日、2人の安否確認を求める110番があり、安佐北署員が駆けつけると、室内で倒れている亥聖子さんを発見。死亡が確認された。当時、自宅にいた哲也被告は手首にけがをしており、病院に入院。捜査関係者によると、手首を切って心中を図ったとみられる。哲也被告は8日後に退院し、逮捕。その後、起訴された。
2人は約30年前から広島市安佐北区の住宅街で暮らしていたという。
「おしどり夫婦だったので、事件は衝撃だった」。近くの住民や夫妻の知人は口をそろえる。近隣住民によると、2人の自宅からは、お互いの笑い声がよく聞かれていたという。同区内の女性(73)は以前、哲也被告の勤務先に亥聖子さんが訪れていたのを目撃したといい「いつも一緒にいる夫婦だった」と振り返る。
一方、近年、亥聖子さんが病気で体が不自由になり、哲也被告が付き添って2人で歩く練習をしている姿が見かけられたという。
近くに住む知人男性によると、哲也被告も病気で通院しながら介護していたといい、男性は「体調のつらさを漏らすことはあっても、介護のことは聞いたことがなかった。不安や悩みを一人で抱えていたのだろうか」と漏らし、知人女性は「2人の間に何があったのか知りたい」と話した。
同様の事件は各地で相次いでいる。広島市では2019年、70歳代の夫が妻(当時72歳)に頼まれて首を絞めて殺害したとして、嘱託殺人罪で有罪判決を受けた。夫は病気の妻を介護していたという。また、介護していた妻(同89歳)を殺害したとして、宇都宮市の80歳代の夫が今年2月に有罪判決を受けた。
厚生労働省の19年国民生活基礎調査によると、同居人が介護をしている世帯のうち、介護をする人もされる人も65歳以上の老老介護は約6割に上った。3割超はともに75歳以上だった。重い負担となり、介護疲れで行き詰まり、虐待や殺人に至るケースが相次ぐ。
悲劇を防ぐためにはどうしたらいいか。淑徳大の結城康博教授(社会福祉)は「一人で介護をする人は、精神的に追い込まれ、周囲から孤立しがちだ。介護者は、公的支援を積極的に受けることや、介護者同士で悩みを語り合う場を作ることが大切だ」と呼びかけている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/56c9b32fa42e4f530508bce99718ef712f8ccebd
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