中国放送
80歳の妻を、承諾を得たうえで殺害した罪に問われた72歳の夫に、拘置所で話を聞きました。背景に浮かぶのは「老老介護」です。 ことし4月、広島市の住宅で、手首に切り傷を負った72歳の夫と亡くなっている80歳の妻が見つかった事件。村武哲也被告は、自宅で、妻・亥聖子さんの承諾を得て、首にマフラーを巻いて締めつけ、殺害したとされています。 「介護ねえ、奥さんが脳こうそくで倒れられて、それからずっと見ておられたんじゃけど、ようされとったですよ。」(近くの住民) 2人暮らしで、亥聖子さんの介護をしていたという村武被告…。事件に至るまでに何があったのか、拘置所で接見し、話を聞きました。 数年前から直腸がんと胃がんを患っているという村武被告は、車いすに座り、腕に点滴がつながれた状態でした。 「妻は6、7年前に脳こうそくを患い、左半身の麻ひが出ていました。」(村武哲也被告) 50年ほど連れ添い、元気なころは2人で釣りにもいっていたという村武被告。最近の亥聖子さんは、腰の痛みがひどくなり、村武被告が1日6回、痛み止めの座薬を入れていたそうです。 事件当日は、会話がなかなかできない状態だった亥聖子さんと、「死ぬかい」「いいよ」というやり取りがあったと明かしました。 そして、「自分も死ぬ」というと、亥聖子さんはうなずいたそうです。 「女房も体力もないし、こっちもないし…。もう、これ以上は無理じゃと思った。本当は2人で逝く予定だった。すぐ逝けんかったことを謝りたい。」(村武哲也被告) まわりに相談できる環境だったことは、否定しませんでした。 「自分でなんとかしようという思いがあった。」(村武哲也被告) 24日の初公判で、村武被告は起訴内容を認めました。 検察側は、冒頭陳述で、亥聖子さんの他人に迷惑をかけたくないと施設への入所を嫌がっていた意思を、村武被告が尊重していたと述べ、体力的にも精神的にも限界を感じるようになり、心中を持ちかけたと指摘しました。 被告人質問で、当時を振り返って、どうしていたらよかったと思うか尋ねられると…。 「もっと方法はなかったか…。でもなかったと思う。」(村武哲也被告) 検察側は、酌むべき事情はあるとしつつも懲役3年を求刑。弁護側は、執行猶予つきの判決を求めました。 裁判官から最後に何か言いたいことはありますかと問われた村武被告は…。 「もっと簡単に介護の援助を受けられる、そんな世の中になったらいいなと思います。」(村武哲也被告) 国の調査では、介護をする人もされる人も65歳以上の、いわゆる「老老介護」の割合は、年々増えています。 事件を止める手立てはなかったのか…。判決は、来月2日、言い渡されます。
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