2022年1月10日月曜日

「死刑は廃止、でも安楽死は容認」の国が増加中、日本はなぜ逆か

 

2022年1月6日木曜日

『命の選択~ALSとの闘い~』9月26日(日)25時55分~26時50分

第30回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:TSKさんいん中央テレビ)

左から)吉岡哲也さん、妻・朋子さん

『命の選択~ALSとの闘い~』

9月26日(日)25時55分~26時50分

ALS患者たちのメッセージ

2020年7月、京都市のALS患者への嘱託殺人事件が発覚、医師2人が逮捕された。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋力が衰え、多くの患者が2年から5年で死亡するという原因不明の難病。全国で約1万人、島根・鳥取の山陰両県でも約150人が患っている。患者たちはこの事件についてどう感じているのか、取材を始めた。

まず話をしてくれたのは、島根県松江市のALS患者・吉岡哲也さん。発症から3年、徐々に歩けなくなり、呼吸も弱りつつある。死にたい時もあるし、生きたいと思う時もある。心情は揺れている。自分自身がこれから生き続けるかどうかの選択に、「迷っている…」という。


病状を語る吉岡哲也さん

ALSは喉の筋肉が弱くなり自発呼吸ができなくなった時、人工呼吸器を装着するかどうかを自らで決めなければならない。人工呼吸器をつけない選択、それはすなわち死を選ぶことを意味する。呼吸器をつければ、手足が動かず声を発することはできなくても、生き続けることはできる。しかし、一度装着すれば、他人が呼吸器を外すことは殺人の罪に問われる場合もありできない。

吉岡さんはこの「呼吸器装着の選択」に迷いながら闘病生活を送っていた。密着取材は2020年の夏から始まった。症状が徐々に進行する日々。一方で、「命の選択」への結論はまだ出ていない。

ALS患者で人工呼吸器を装着し、生きる選択をする人は3割。装着しない人は7割に上る。なぜ、生きる選択をする人はこれほどまでに少ないのか。島根県の難病相談支援センターや、専門医、呼吸器を装着し生きる選択をした患者を取材することで、その理由を追った。

ALS患者は呼吸をするための筋力も低下しているため、新型コロナウイルスへの感染は、命に直結するリスクがある。このため、病院で介護を受けている患者は面会謝絶になり、家族とも会えない日々が続いている。久しぶりに家族のもとに帰ってきた患者が取材に答えてくれた。

景山敬二さんは人工呼吸器を装着、つまり「生きる選択」をしたALS患者だ。会話はパソコンを使って行う。わずかに動く頬に特殊なセンサーを取り付け、パソコンのカーソルを操作し文字を入力している。例えば、「顔を見ての会話はひとしおです」と一文を打つにも、かかる時間は約4分。長い時間をかけ、一文字一文字、頬を動かし語ってくれた。コロナ禍と難病、生と死、家族への思い。声を発することができないため、景山さん自身の声を聞くことはもうできない。しかし、その言葉は健常者となんら変わらない。むしろ、時間をかけ語った言葉には、重みがあった。


頬を使いパソコンに文字を入力する景山敬二さん

ALSを患い、人工呼吸器を装着した患者の10人に1~2人の割合で重篤化するケースがある。完全閉じ込め症候群・TLSだ。脳の働きは保持されるのに、体は動かず、外部に意思を一切伝えられない。ALS患者は、この恐怖を抱えている。

そうした中、京都市の嘱託殺人事件は患者たちに動揺を与えた。ALSを患った50代女性がSNSで知り合った医師2人に自らの殺害を依頼、医師2人が嘱託殺人の罪に問われている。患者たちは女性の思いに対し、賛成や反対など様々な思いを抱いていた。しかし、その考え方に答えは見えない。

鳥取市には、死について独自の考えをもつALS患者もいた。岡本充雄さんは呼吸器を装着し17年になる。しかし、呼吸器の装着は本人が意図しないものだった。岡本さんは今では孫に囲まれ、時折笑顔もこぼす。それでも岡本さんは「今も、心は揺れている」「お金を払って尊厳死ができるなら…」と語る。その思いの奥底には何があるのか…。

中央)孫に囲まれる岡本充雄さん

迷い、希望、葛藤…。厳しい選択を目の前にしたALS患者が、声を振り絞り、また声なき声で、コロナ禍の世の中に伝えたメッセージに迫った。

ディレクター・藤谷裕介(TSKさんいん中央テレビ)コメント

2021.09.19更新

その他

第30回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:TSKさんいん中央テレビ)

左から)吉岡哲也さん、妻・朋子さん

『命の選択~ALSとの闘い~』

9月26日(日)25時55分~26時50分

ALS患者たちのメッセージ

2020年7月、京都市のALS患者への嘱託殺人事件が発覚、医師2人が逮捕された。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋力が衰え、多くの患者が2年から5年で死亡するという原因不明の難病。全国で約1万人、島根・鳥取の山陰両県でも約150人が患っている。患者たちはこの事件についてどう感じているのか、取材を始めた。

まず話をしてくれたのは、島根県松江市のALS患者・吉岡哲也さん。発症から3年、徐々に歩けなくなり、呼吸も弱りつつある。死にたい時もあるし、生きたいと思う時もある。心情は揺れている。自分自身がこれから生き続けるかどうかの選択に、「迷っている…」という。

病状を語る吉岡哲也さん

ALSは喉の筋肉が弱くなり自発呼吸ができなくなった時、人工呼吸器を装着するかどうかを自らで決めなければならない。人工呼吸器をつけない選択、それはすなわち死を選ぶことを意味する。呼吸器をつければ、手足が動かず声を発することはできなくても、生き続けることはできる。しかし、一度装着すれば、他人が呼吸器を外すことは殺人の罪に問われる場合もありできない。

吉岡さんはこの「呼吸器装着の選択」に迷いながら闘病生活を送っていた。密着取材は2020年の夏から始まった。症状が徐々に進行する日々。一方で、「命の選択」への結論はまだ出ていない。

ALS患者で人工呼吸器を装着し、生きる選択をする人は3割。装着しない人は7割に上る。なぜ、生きる選択をする人はこれほどまでに少ないのか。島根県の難病相談支援センターや、専門医、呼吸器を装着し生きる選択をした患者を取材することで、その理由を追った。

ALS患者は呼吸をするための筋力も低下しているため、新型コロナウイルスへの感染は、命に直結するリスクがある。このため、病院で介護を受けている患者は面会謝絶になり、家族とも会えない日々が続いている。久しぶりに家族のもとに帰ってきた患者が取材に答えてくれた。

景山敬二さんは人工呼吸器を装着、つまり「生きる選択」をしたALS患者だ。会話はパソコンを使って行う。わずかに動く頬に特殊なセンサーを取り付け、パソコンのカーソルを操作し文字を入力している。例えば、「顔を見ての会話はひとしおです」と一文を打つにも、かかる時間は約4分。長い時間をかけ、一文字一文字、頬を動かし語ってくれた。コロナ禍と難病、生と死、家族への思い。声を発することができないため、景山さん自身の声を聞くことはもうできない。しかし、その言葉は健常者となんら変わらない。むしろ、時間をかけ語った言葉には、重みがあった。

頬を使いパソコンに文字を入力する景山敬二さん

ALSを患い、人工呼吸器を装着した患者の10人に1~2人の割合で重篤化するケースがある。完全閉じ込め症候群・TLSだ。脳の働きは保持されるのに、体は動かず、外部に意思を一切伝えられない。ALS患者は、この恐怖を抱えている。

そうした中、京都市の嘱託殺人事件は患者たちに動揺を与えた。ALSを患った50代女性がSNSで知り合った医師2人に自らの殺害を依頼、医師2人が嘱託殺人の罪に問われている。患者たちは女性の思いに対し、賛成や反対など様々な思いを抱いていた。しかし、その考え方に答えは見えない。

鳥取市には、死について独自の考えをもつALS患者もいた。岡本充雄さんは呼吸器を装着し17年になる。しかし、呼吸器の装着は本人が意図しないものだった。岡本さんは今では孫に囲まれ、時折笑顔もこぼす。それでも岡本さんは「今も、心は揺れている」「お金を払って尊厳死ができるなら…」と語る。その思いの奥底には何があるのか…。

中央)孫に囲まれる岡本充雄さん

迷い、希望、葛藤…。厳しい選択を目の前にしたALS患者が、声を振り絞り、また声なき声で、コロナ禍の世の中に伝えたメッセージに迫った。

ディレクター・藤谷裕介(TSKさんいん中央テレビ)コメント

「“死ぬ権利”、“尊厳生”。コロナ禍で死におびえ、生きるためのニュースを制作する我々にとって、思いもよらない言葉でした。完全閉じ込め症候群という恐怖、そして自ら生死を選択するという残酷な現実。番組の中で、ある患者さんが、“いずれ終息するだろう新型コロナと異なり、ALSは治療薬がない”とおっしゃっています。インタビュー中、どのような言葉を返せば良いのかわかりませんでした。取材に協力してくださった患者さんやご家族に、感謝の気持ちしかありません」

【番組概要】

第30回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『命の選択~ALSとの闘い~』(制作:TSKさんいん中央テレビ)
<放送日時>
9月26日(日)25時55分~26時50分
<スタッフ>
プロデューサー:岡本 敦(TSKさんいん中央テレビ)
ディレクター:藤谷裕介(TSKさんいん中央テレビ)
構成:関 盛秀
ナレーター:鈴木 渢
撮影:野田 貴
MA:羽石 忍 (スタジオヴェルト)
音効:金子寛史 (フローレス)

分母を増やすのは無駄にならない~安楽死制度を議論するための手引き15

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