2023年3月4日土曜日

逆算で考える~安楽死制度を議論するための手引き06

逆算で考える~安楽死制度を議論するための手引き06

西智弘(Tomohiro Nishi)
2023年3月1日 22:23

論点:安楽死制度実現までのロードマップを描けるのか?

 昨年の5月から、この「安楽死制度を議論するための手引き」の連載を続けてきましたが、ここでもう一度改めて、この連載が目指す方向がどういったものだったか振り返っておきましょう。

安楽死制度の話題が出るたび、「もっと議論を深めるべき」「いまの日本では時期尚早」という結論が繰り返されるが、「では具体的にどのような論点で議論を深めるべきか」「いつになったらその『時期』が来るのか」について言及された記事、ましてや具体的にその議論を進めるためのステップについて述べられた記事はほとんど見ることは無い。

「苦しみの全てをゼロにできるのか~安楽死制度を議論する手引き00」より

 みんな、ゴールを妄想するのは得意なんですよね。
「○○大学に合格したい」
「女の子にモテるようになりたい」
「豪邸を建てて優雅に暮らしたい」
 この延長線上に
「安楽死制度が日本でも認められるべき」
 があるように僕は感じます。

 例えばあなたが高校1り、求めているゴールにいつまでたってもたどり着けないのです。

 では、そのように逆算をして考えていったとき、僕たちがまず成し遂げるべき地固めの要素は何なのか?について、『安楽死制度を求めていくために必要な3つの要素』などを連載として述べてきたわけです。

 このような、丁寧な議論はとても地味で耳目を惹かず、またゴールまでの全体像が頭に入らなければ、「いま議論していること」がどのようにゴールに結びつくかイメージできないため、「理解できた」知的興奮も得られないでしょう。

 何度も似たような議論が繰り返されることで、無限ループに陥ってしまう感覚もあるかもしれません。ここは、議論を進めていく中で「○○宣言」や「○○声明」といったマイルストーンを示すことで議論の繰り返しを予防することができます。「○○声明」と聞くと、多くの方には「お偉い方々が自身の功績を誇示するためのパフォーマンス」と見えるかもしれませんが、「全体の議論の道のりはわかった、そのうえで私たちはここまでは議論した」を示せる重要なものなのです。よって、もし時間を空けて改めて安楽死制度について議論しようという流れになった場合、「5年前に○○宣言が出されて以来、着々と重ねられた議論によって昨年××声明が出されましたね。では今日は、××声明で採択されたが不十分であった内容についてさらに議論をすすめ、少なくとも1年後には新たなマイルストーンを採択したい」と、既に議論済みの内容については「××声明の内容、当然知ってますよね?この分野に関わってきたんだもんね。じゃあ今日はその続きからいくから」とでき、大幅に時間が省略できるのです。

 安楽死制度も、日本で本気で進める気があるのであれば、ゴール部分のところばかりを主張してはいけません。制度実現までの全体像をまず提示いただき、「今回はここまでを議論して、××声明を1年後に採択すること目標にする」といった進め方をしていくことが必要なのではないでしょうか。


https://note.com/tnishi1/n/n45c058665d2e

分母を増やすのは無駄にならない~安楽死制度を議論するための手引き15

分母を増やすのは無駄にならない~安楽死制度を議論するための手引き15 西智弘(Tomohiro Nishi) 2024年4月15日 20:38 論点:安楽死の議論は本当に「進んでいない」のか ▼前回記事 「安楽死制度の議論は、日本では全然盛り上がっていかない」という声を、時々耳に...