最近アメリカで、末期の脳腫瘍で余命半年と告知され、みずから死を選ぶと宣言していた29歳の女性が、医師から処方された薬物を服用して死亡していたことが分かり「安楽死」の是非について世界的に大きな議論を呼んだ。安楽死や自殺幇助(ほうじょ)は、どこの国でも常に議論の対象となっている。
ともに患者の苦痛を終わらせるという目的があるのだが、倫理的な観点から各国では合法にすべきか、非合法にするべきかで揺れ動いている。ここでは日本を含む、世界10か国の法律的な安楽死、自殺幇助に関するスタンスを見ていこう。
安楽死、自殺幇助はそれぞれ2種類に分けられる
積極的安楽死:
患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、患者の自殺を故意に幇助してに死に至らせること
消極的安楽死:
患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、または、患者本人が意思表示不可能な場合は患者本人の親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療を開始しない、または、治療を終了することにより、結果として死に至らせること
積極的幇助:
患者本人の自発的意思に基づく要求に応じ、苦痛のない自殺手段を提供すること
消極的幇助:(尊厳死)
回復の見込みのない患者に対し、それ以上の延命措置を打ち切ることを指す。改善の見込みのない苦痛よりも死を選択するとの意味から、尊厳死とも呼ばれる。
10. カナダ
カナダは積極的安楽死、積極的幇助は違法であるが、消極的幇助(尊厳死)は合法である。
9. アルバニア
アルバニアでは自殺幇助と安楽死の議論が盛んな国である。1999年から一部のケースにおいて自殺幇助が合法となった。患者が昏睡状態など意思表示ができない状態で、家族三人が同意し正当な承諾が得られた場合に限り、消極的幇助が合法となったのだ。
8. コロンビア
コロンビアでは、ガン、エイズ、末期患者、腎・肝不全と診断され苦しんでいる末期患者が死を希望し、かつ明確な家族の承認が得られた場合には、自殺幇助が合法となる。コロンビアの憲法裁判所は2010年、自殺幇助を認める判決を出し、末期患者への自殺幇助では何者も罪には問われないとした。
7. 日本
日本に安楽死を認める法律はない。1991年、家族の要望を受けた医師が患者に薬物を注射するなどして死亡させた東海大学病院安楽死事件での判例では、以下の4つの条件を満たさない場合は違法行為となると認定されている。
1.患者が耐え難い激しい肉体的苦痛に苦しんでいる。消極的幇助(尊厳死)について、一部合法化しようという動きがある。それは、「2人以上の医師が”死期が間近”と判断し、本人の希望が書面などで明らかな場合に、延命治療をやめても、医師の責任を問わない。」という内容のものだが、反対意見が多く法案提出には至っていない。
2.患者の病気は回復の見込みがなく、死期が迫っている。
3.あらゆる手を尽くしても患者の肉体的苦痛取り除く手段が他にない。
4.患者本人が安楽死を望んでおり、自発的に意思表示している。
6. アメリカ
連邦政府は死に関する法律での議論を避けてきたため、州ごとの法律が一般的に安楽死や自殺幇助の合法性を規定しているそうだ。積極的安楽死は全州で違法だが、自殺幇助はバーモント州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ワシントン州とモンタナ州の5つの州で合法だ。
5. ドイツ
ドイツでの患者は、文書命令によりどんな治療も拒否する権利をもっている。例えその治療が自身の命に関わるものであったとしてもだ。さらに自殺幇助はなかば合法であり、患者からの文書命令があれば、医師は合法的に病気の患者に寿命を短縮する薬を処方することができる。
患者の承諾があれば医師は患者から生命維持装置をはずすことも許されているが、どんな方法であれ医師が患者意志を無視して生命を奪うことは許されていない。そのため、消極的幇助・安楽死は合法だが、積極的幇助・安楽死は違法となっている。
4. スイス
スイスでは1930年代から自殺幇助が合法な一方、積極的安楽死は違法である。これは、患者自身が自分の意志で服薬する限りは、医師が患者に致死量の薬を処方すること自体は合法ということである。しかも実際に致死量の薬を服用する場合、医師はその場に居合わせる必要がないという。これ故に末期患者がスイスに渡り医師に薬を処方してもらい自殺するという外国からの「自殺ツーリズム」が多く行われているという。
3. ルクセンブルク
ルクセンブルクは2009年、安楽死が合法化された3番目の国となった。ルクセンブルクの患者は、末期でありかつ二回以上の要求をすれば安楽死する権利を得られるという。患者からの要請の承認は2人の医者と、患者の意志表明、それを合理的に判断する専門家らによる審査員団によって行われる。
2. ベルギー
ベルギーでは安楽死が10年前から合法となっている。この国での安楽死に関する法律は極めて包括的で、革新的だと言う人もいれば、極めて危険だと考える人もいる。今のところ、「治療しても取り除くことのできない、堪えがたい肉体的・精神的苦痛に絶えずさらされている状況」にある患者が安楽死を要請するようである。
1. オランダ
世界で一番最初に安楽死を合法化した国はオランダである。2002年にこの法案を通した。12歳以上ならば安楽死の要請ができるそうだが、その承認の条件は厳しく、耐え難い苦痛にさらされている末期患者のみが許可される。さらに、患者は安楽死を要求したときに精神状態が正常でなければならない。安楽死が実行される前には、担当医師とは別の医師と専門委員会がその是非の判断をくだすのだそうだ。
via:therichest・原文翻訳:such
尊厳死を公言した米国人女性、ブリタニー・メイナードさん(29)
末期の脳腫瘍を患いネット上で尊厳死を予告する動画を公開したブリタニー・メイナードさんだが、予告通り自らの命を絶った。メイナードさんは11月1日、自宅で安らかに息を引き取ったという。
「親愛なる全ての友人たちと愛する家族のみんなへ。さようなら。私は今日、尊厳死を選びます。脳腫瘍は私からたくさんのものを奪っていきました。末期となった今、尊厳死を選ばなければさらに多くのものが奪われてしまったことでしょう」、「世界は美しさに満ち溢れていました。旅は、私の偉大なる教師でした。そしてもっとも偉大な支援者は家族、友人と仲間たちです。このメッセージも、偉大なる支援者たちは私のベッドのそばで応援してくれています。さようなら、世界。この世に善が満ち溢れていくよう、次へつなげてください。」メイナードさんはソーシャルメディア上でそう書き残した。メイナードさんは、結婚してまもない今年1月に余命半年の宣告を受け、進行性がんにより苦痛を伴う死になると告げられた。その後、米国内で「死ぬ権利」が認められている数少ない州の一つ、オレゴン州に夫と共に移り住んでいた。
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