2022年2月10日木曜日

人は死ぬ権利があるのか?世界的に波紋を呼んだ9つの安楽死

 

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 回復不能な病を患った時、耐えがたい心身の苦痛がある時、人は死を選ぶ権利があるのだろうか?安楽死問題は、世界各国で大きな議論を呼んでいる。

 一般的に安楽死は2種にわけられる。患者本人の自発的意思に基づく要求に応じて、患者の自殺を故意に幇助して死に至らせる、”積極的安楽死” と、患者本人の自発的意思、またはは親・子・配偶者などの自発的意思に基づく要求に応じ、治療をしなかったり、治療を終了させ、結果的に死に至らせる”消極的安楽死” がある。

 ここでは、世界的に波紋を呼んだ積極的安楽死、8つケースについて見ていくことにしよう。

1. 大統領に安楽死を直訴した14歳の少女(チリ)

 末期の嚢胞性線維症に苦しむチリの14歳の少女が、大統領に安楽死の許可を嘆願している。彼女の名はヴァレンティーナ・マウレイラ。赤ん坊のときにこの病気の診断を受け、最近、フェイスブックに自撮りの動画を投稿して、チリ大統領ミシェル・バチェレに必死に面会を訴えた。
わたしの名前はヴァレンティーナ・マウレイラ、14歳。嚢胞性線維症に苦しんでいます。一刻も早く大統領とお話ししなくてはなりません。この病気とともに生きるのに疲れてしまったからです。大統領が認めてくれれば、永遠にわたしを眠らせてくれる注射をうってもらえます。
 病室で撮影された動画は2015年2月に投稿され、ユーチューブでも拡散されている。
ADOLESCENTE FIBROSIS QUISTICA HACE LLAMADO A BACHELET チリの法律では、自殺幇助は禁止されているため、大統領がヴァレンティーナの願いをかなえることは不可能だ。

 しかし、少女の悲痛な叫びは、この国の2000万の人の心を動かした。ツイッターでも大きな話題になり、彼女の動画は、安楽死をカトリック国家で合法化するべきかどうか、広く議論される引き金とになった。

 自身も小児科医であるバチェレ大統領は、ヴァレンティーナを訪問し、1時間あまり面談した。嚢胞性線維症は、遺伝子疾患で効果的な治療法はない。肺や内臓が粘液の厚い層で詰まってしまい、衰弱する。

 体重34キロのヴァレンティーナは、人工呼吸器に頼っていて、チューブから栄養を与えられている。一か月前に同じ病院でこの病気の患者が亡くなったことから、ヴァレンティーナは安楽死を望むようになった。

2. 死ぬ権利を求めてオレゴン州に引っ越した不治の病に冒された29歳の女性(アメリカ)

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 オレゴン州の尊厳死法のもと、自らの人生に終止符をうつことを宣言していたブリタニー・メイナードが、2014年11月1日にバルビツール酸系鎮静薬の致死薬を自宅で服用して死んだ。29歳だった。フェイスブックにさよならレターを投稿していた。

 メイナードと夫のダン・ディアスは、一ヶ月前にオレゴン州の尊厳死法を活用するつもりだと発表して世間の注目を集めていた。

 これは、末期患者が医者が処方する致死薬物を服用して、自分の意志で自らの命を終わらせるのを認めるというものだ。ふたりは6月にカリフォルニアから、1994年に尊厳死が認められたオレゴン州に転居した。

 メイナードは、2014年1月にステージ4の悪性脳腫瘍と診断され、余命半年と言われていた。自ら命を絶つという彼女の決断は、死ぬ権利と自殺幇助の論争に火をつけた。彼女の行動はひとりよがりだと批判されたが、支持者たちは彼女の勇気を褒め称えた。
The Brittany Maynard Fund

3. 病に苦しむ夫のそばで自らも死を望んだ女性(カナダ)

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 50年間連れ添ったカナダに住むジョージとベティ・カウンビアは、死ぬなら一緒にと願っていて、同時に自殺することが法的に認められた最初の夫婦になろうとしていた。ふたりはジョン・ザリスキーの2007年のドキュメンタリー「自殺旅行者」で取り上げられた。

 カナダでは自殺幇助は合法だが、ふたりはスイス政府の認可でその一生に終止符を打つことを希望した。ジョージは心臓疾患に苦しんでいるが、ベティは健康そのもので、ふたりの希望は珍しいケースだ。

 スイスの自殺幇助機関ディグニタスの代表ルードウィッヒ・ミネリが、カウンセリング後、健康な人にも致死薬を処方する権利を医者に許可するため、チューリッヒ州に嘆願したが、結局この夫婦の希望は却下された。

 だが、2009年、事態は奇妙な展開となった。ベティがガンを発症して亡くなり、夫のジョージは心臓疾患を抱えながら生き続けている。

4. 安楽死を望んだ双子のきょうだい(ベルギー)

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 2012年、うりふたつの双子のきょうだい、マークとエディ・フェルベッセンがベルギーの医師によって安楽死した。ふたりは生まれながらに耳が聞こえず、まもなく全盲になると診断されていた。

 国の安楽死法の下での珍しいケースで、アントワープ出身のこの45歳の双子は、互いの姿がもう見られなくなってしまうことが耐えられずに死を選んだ。12月14日、イェットにあるブリュッセル大学病院で薬物注射によって安楽死した。

 ふたりは耐えがたい痛みに苦しんでいたわけでも、不治の病におかされていたわけでもなかったため、このケースはかなり物議をかもした。

 ふたりとも靴職人として働き、アパートをシェアしていた。安楽死を統括する医師のデイヴィッド・デュフォアは、このきょうだいはまぎれもなく誠実な思いで決断を下したのだと主張した。

5. 刑務所での耐えがたい生活よりも、安楽死する権利を認められた殺人犯(ベルギー)

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 2014年9月、刑務所で精神的に耐えがたい毎日を送っていたレイプ殺人犯が、ベルギーの安楽死法の下、死ぬ権利を認められた。それ以来、少なくともほかの15人の囚人からも同じような要求があがっているという。

 2002年以降ベルギーでは、肉体的、精神的な苦痛が耐えられず、もうその状況を改善することができないと医療専門家から認められれば、医者に頼んで自らの人生を終わりにすることができる。

 フランク・ファン・デン・ブリーケン(50)は、レイプと殺人の罪で終身刑を宣告され、服役しているが、暴力への衝動を克服できず、刑務所で一生過ごすことに耐えられないと言っていた。これまで30年服役していて、3年前から安楽死の希望を訴えていた。

 彼の訴えは精査され、まずは精神的な治療を受けることになったが、それも失敗に終わったので要求が認められることになった。

 2015年1月に安楽死が行われる予定だったが、医者たちが執行から手を引いたため、突然キャンセルされた。ブリーケンの安楽死の権利は、彼の犠牲者の遺族から強く非難されたのだ。

 1989年元旦、ニューイヤーズイブパーティからの帰り、ブリーケンにレイプされ絞殺された19歳のクリスティーネ・レマクルの姉は、ブリーケンを楽にさせるのではなく、刑務所の中で苦しませることを望んでいる。

6. 新婚早々不随になり、生まれてくる息子に会わずに生命維持装置を外した男性(アメリカ)

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 2013年、ハンティングの事故で肩から下が不随になってしまったインディアナ州の男性が、事故の二日後、生命維持装置をはずした。ディケーターに住むティモシー・バウワーズ(32)は、シカ狩りをしていたとき木から落ちて、脊髄をひどく損傷した。

 バウワーズは自分で動くこともできず、呼吸すら人工呼吸器に頼らなければならなくなってしまった。

 家族は、手術をして脊髄を接合する手術ができるが、そうすると一生歩けないし、病院の外に出ることはできなくなることを伝え、どうするかと訊いた。

 妹のジェニー・シュルツによると、バウワーズは激しく首を振って、絶対に嫌だと答えたという。医者が同じ質問をしても、答えは同じだった。そして、家族は人工呼吸器をはずし、その5時間後に彼は死んだ。

 バウワーズは3ヶ月前に結婚したばかりで、身重の妻アビー、義理の息子グレッグ・シャイヴリー、まだ生まれていない男の子が残された。かねてからバウワーズは車椅子生活だけはしたくないと妻に言っていたという。

7. 性転換手術に失敗して安楽死し男性(ベルギー)

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 2013年、ナンシー・フェアヘルツとして生まれたネイサン(44)は、薬物注射によって合法安楽死を遂げた。

 耐えがたい精神的苦痛が原因だという。ネイサンの安楽死を手掛けたガン専門医のウィム・ディステルマンズは、一年前に失明を恐れた生まれつき耳の聞こえない双子の安楽死も扱った医師だ。

 ミスター・フェアヘルツは、2009年にホルモン療法を受け、乳房切除の手術、そして2012年にはペニスをつける手術を行った。だが、手術結果は期待はずれのものだったようだ。

 患者の希望により医師によって行われる安楽死は、ヨーロッパで法的に認められてるのは2009年現在ではスイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグだけだった。

8. 顔にできた腫瘍を苦に違法な安楽死を遂げた女性(フランス)

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※画像クリックで腫瘍ができた後の顔が表示される(閲覧注意) 2000年、引退したフランス人教師のシャンタル・セビアは、鼻腔神経芽細胞腫と診断された。これはこの20年間で200例しか報告されていない珍しいガンだ。セビアは手術や薬の危険を恐れて、どんな治療も拒み、安楽死の権利を得るために戦った。

 2008年3月、フランスの裁判所は、52歳の元学校教師で、三人の子供の母親であるセビアの安楽死の願いを却下した。ミズ・セビアは、死の幇助の権利を求めていたのであって、死そのもの権利を求めたわけではない。

 数日後、ひどく無残な女性の遺体が彼女の自宅で見つかった。解剖の結果、自然死ではないことがわかり、血液検査をするとフランスの薬局では処方されていないペントバルビタール系剤の毒性濃度が検出された。この薬は、自殺幇助の目的のため、世界中の医者が使っているものだ。

References:oddee / written by konohazuku / edited by parumo

 ちなみに、日本においては、積極的安楽死は法的に認められておらず、もしこれを行った場合は刑法上殺人罪の対象となる。ただし、消極的安楽死は、刑法199条の殺人罪、刑法202条の殺人幇助罪・承諾殺人罪にはあたらないとされている。

https://karapaia.com/archives/52187571.html

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